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すまいる生活エッセー
第2回
親子関係に一石投じる、相続時清算贈与制度が始まる。住宅取得資金は三千五百万円まで非課税に


 介護保険制度が始まって、老後の親の面倒は社会がみる、という風潮が一般化している。介護の必要な高齢者には保険制度で対応し、家族の過重な負担を解放しようというもの。だが、「子供の世話にはなりたくない親」のことが大変気になる子が増えそうな制度が創設されようとしている。国会審議中の相続時清算贈与制度は、現代の親子関係に一石を投じるものになりそうなのである。


 父親の役割の大きさを描いた壬生義士伝


 浅田次郎の「壬生義士伝」がずいぶん売れている。新撰組隊士吉村貫一朗という南部藩出身の男の物語だ。この本は時代ものである上に、東北なまりがふんだんに取り入れられている結構な長編で、同作家の前作「鉄道員」に比べるとずいぶん重い感じがする本だったが、読み出すと前作同様、ぐんぐん引き込まれ、何度もジーンとさせられた。涙を流させる技術にとても長けた作家なのだろう。この本で考えさせられたのは、幕末から維新にいたる過酷な時代におけるサムライという「義」を貫いた「父親」の姿、あるいは男の生き方というものだった。父親の生き方が子供に与える影響が限りなく大きい最後の時代の最後のサムライとして吉村貫一朗が描かれている。


現代における父親が問われる新贈与制度

 さて、いきなり本の紹介をしてしまった。それというのも、今年の住宅をめぐる制度の変更の中で、父と子、あるいは親と子の関係が新たに焦点を当てられるような制度が登場したからである。


 六十五歳以上の親から二十歳以上の子へ非課税で贈与できる額が一度に二千五百万円まで引き上げられ、相続が発生した時点で清算できる新制度が登場したのである。正式には国会で新年度予算が改正されてからの話だが、施行は本年一月に遡及して適用されることとなっているので、事実上決定しているといってもいいだろう。


 その非課税贈与の額が「住宅取得資金」である場合は、六十五歳以上という年齢制限が無く、かつ、金額が一千万円上積みされて三千五百万円までとなる。夫婦がそれぞれの親から資金援助を受けられる額の合計が住宅以外では五千万円、住宅取得資金では七千万円まで、非課税となるわけである。


世代間の資産の移転を促進するのが狙い


 この制度の狙いは世代間の資産の移転を促進するところにある。一般的に高齢世代は住宅を所有し、さらに一定の金融資産を持っている。さらに現行の年金制度が充実し、各種福祉制度も高齢者保護の観点から充実しているのに対して、若年世代は将来の年金給付額が減少することが推測されている上に、今後各種の増税、負担金の増額にさらされ、資産形成の可能性が絶望的な情勢にある。今回の新制度は、このような実態を、結果的に、家族間で緩和させようということのようだ。


 しかし、相続する資産といったって俺のところには無いよという父親も多いはず。富裕層優遇税制だ、金持ちの子が金持ちになる鼻持ちなら無い制度だと文句をいう人も多いかもしれない。しかし、もしかして、親孝行しておいたほうがいいかもしれない、と子供たちに考えさせる効用はありそうである。


(不動産市況アナリスト 志田真郷)
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