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2005年9月巻頭言

札幌市「市街化区域見直し」素案説明会終わる。


説明時間短く、充分な理解が得られているのか疑問の声も


 先月も書いた札幌市の都市計画区域の全面見直し作業が進行している。8月末までに市内全区での説明会が終わり、「パブリックコメント」の募集も9月上旬で締め切られる。以降は集められた意見の集約と具体案作りが進められ、正式案を決め、北海道知事の同意を得て縦覧期間、そして実施へ(3月)というスケージュールになっている。


 8月30日に行われた説明会の最終となる事業者への説明会では、実質説明時間が25分で質疑時間が40分程度とられていたが、あの膨大な改正案を説明するのに25分は明らかに短い。しかも、会場に参加者があふれ、立ち見の者も多数いるなど、業界の関心の高さがはっきりと現れていて、きちんとした内容を伝えるには絶好の機会であると思われたが、あまりにもそっけない説明に終始していた。


 説明の内容は4つに分かれていて、①都心東部の魅力ある空間づくりを誘導するための新たなルールの設定②市内ほぼ全域に建築物の高さの最高限度を設定③郊外住宅地の容積率を60%から80%へ緩和、敷地面積最低限度を50坪に制限④工業地などの建物用途の制限をよりきめ細かく設定する、というもの。用意された実質12ページのパンフレットに沿って説明されたが、説明というよりは要旨報告といった趣で、全体の構造を理解するだけに終始した感がある。質問も全体に及ぶものが2、3あったが、質問と回答がすれ違い、盛り上がらないまま、終わった。さらに当日は11月から実施される商業区域と工業区域での住民への事前告知制度についての説明も抱き合わせで実施され、参加したデベロッパーの多くは、圧倒的な改正の力に首をうなだれてエレベーターに乗り込んで帰って行った。

 
 事前に実施された各区での住民説明会の説明時間も事業者への説明時間と大差ないと聞いた。また、中央区など、住民の関心の高い地域では、マンション建設反対派住民が多く参加し、より強い規制をもとめる声が高かったようだ。

様々な疑問・問題点を残したまま進められる改正作業、はたして回答されるのか


 まず、気になるのは、素案説明会やパブリックコメントの法的有効性を巡る問題である。最終的には、縦覧期間中に異議を提出できることとされているが、「素案説明」がどのような法的効力を持っているのか。また説明会での質問や回答、パブリックコメントの処理などが、「了解を得た」という実績作りにのみ利用されはしないかという問題である。また、「札幌市都市計画マスタープランを踏まえた」とされているが、はたして、現時点で予想されている今後の人口変動、特に世帯数の増加が札幌市では今後20年余続くという見込みがある中で、住宅の大型化や都心居住の制限政策が本当に将来の世帯増加に対する政策になるのかというマクロ的な都市経営の視点が説明されていないこと。


 また、今回の高さ制限が導入されると、高さを抑えながら容積率を確保しようとすると、建物の形状が大きく変更され、新たな近隣問題がおきかねないこと、また、これを回避しようとすると、容積率が消化できず、法的容積率が目安に過ぎなくなり、土地価格の下落がおきかねないこと。こういう様々な疑問がどのように説明されていくのか、今後の推移を注視したい。



 なぜ急ぐ、100年の都市経営にかかわる作業、慎重で奥行きのある議論を


 今回の用途地域等の見直しは、これまで外部へ発展することで都市の様々な問題を「膨張的」に解決してきた方向を、まず外延的発展をやめて、既存市街化区域内で解決していこうという「コンパクトシティ」の発想が基本になっている。そこから、既存市街化区域内の「秩序ある再整理」という発想に発展し、今回の作業に発展してきた。ここで問われているのは、「都心は誰のものか」という視点である。常住人口に対して、昼間人口が極端に増加する都心部は、居住している人々だけのものではない。流入してくる勤労者を含む、市域全体の都心なのである。さらにいうなら、そういう都心に隣接する住宅街やマンション街もまた、現在住んでいる人々だけのものではあるまい。都心のインフラをフル活用できる都心暮らしは、多くの人々にとって、大いに魅力あるライフスタイルである。そして、誰でもが利用できる都市であるために、都心インフラが整備されているのであり、人口の集積がもたらす、経済社会の力がそれを許しているのである。都心の意義を掘り下げる奥行きの深い議論が尽くされることを期待している。                
2005年9月

  (不動産市況アナリスト 志田真郷)


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