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2005年8月巻頭言

札幌市、市街化区域ほぼ全域に「高度地区」適用。


 一部地区では8階以内に高さを制限、 超高層ブームに歯止めか


 都市計画審議会が答申、パブリックコメント受付中

 7月20日に開かれた都市計画審議会で札幌市都市計画マスタープランを踏まえた土地利用計画が審議され、市街化区域のほぼ全域を「高度地区」とし、全市的に建物の高さの制限を実施していく素案が認められた。これを受けて札幌市は、8月3日からインターネットなどを通じて「パブリックコメント」を募集開始している。


 今後は、住民説明会などを実施しながら正式案を決め、北海道知事の同意を得て縦覧期間、そして実施へ(3月)というスケージュールになっている。


 新たに設定された高さ規制は24、27、33、45、60メートル。3メートルを1階高さと想定しているので、8階、9階、11階、15階、20階に地域ごとに制限するということ、ただし、都心部の容積率600パーセント地区などは高度地区の指定が無いので、事実上超高層建築は可能になっている。


 具体的に見ていくと、円山地区や羊が丘地区などの「風致地区」に連続する一部エリアで、これまで15階マンションが可能だったところが8階までに規制される。そのほかでの地区では、概ね9階から20階に制限されるので、現時点で進行している30階や40階の超高層マンションは事実上「最後の超高層マンション」となることになる。



コンパクトシティの理念の具体化


 これらの改正の下敷きとなっているのは、昨年3月に制定された「札幌市都市計画マスタープラン」。これまでの都市計画が郊外に広がっていく膨張型都市計画であったのに対して、コンパクトシティへの再構築を基本理念に、今後の人口増加の受け入れを当時の既存都市計画区域内に誘導することとし、これ以上の都市としての外部膨張をやめるという考えだ。これに従って都市計画区域内の土地利用の方向をさらに具体的に示したのが今回の計画案。


 開発業者悪者論だけではすまない問題がある


  この素案提出を巡っては、早くからデベロッパーの中では、大変なことになるとして話題に上がっていた。実際に素案が公表されて、思った以上に厳しいと受け止める向きが多いが、新聞取材に対するコメントでは「静観する」とするものが多く、「開発業者悪者論」の当事者にはなりたくないという意識がうかがえる。


 一方ではすでに新しい規制に引っかかる用地を取得している事業者もいて、3月までの確認申請で計画通り進めるべきか、あるいは様子見か、という厳しい選択肢の前に立たされている事業者もいる。 高さを制限しても、指定容積率どおりに建築ができれば、ほぼ事業収益は確保できる可能性があるが、予定していた戸数が確保できなければ事業収支はマイナスになりかねない。高さ制限が厳しくなるエリアでは、すでに地域の話題なっているケースが多いらしく、「駆け込み着工は許さない」というムードが高まっているという情報もある。このため、計画通り進めても、地域の同意を売るのは簡単なことではない。無理して着工して問題がこじれれば先ほど上げた「悪者開発業者」にされかねない。


懸念される地価への影響、団塊世代の新居としての受け皿の課題


 しかし、問題も様々に起こりうる。実質的に指定容積率が確保できないことになると、用地を購入する金額を下げなければ事業採算が合わなくなることから、地価が下がる地域も出てくる可能性があること。この市民のふところ勘定にかかわるデリケートな問題に理解が得られるのかどうか。確かに高層マンション建設反対の声は高いが、事実上そういうマンションを求めて購入している需要者もかなりの数に上がっている。それによって都心の地価も上がり基調に転じ始めている。経済活性化の起爆材の機能を果たしてきた都心のマンション化という動き全体に水を差さないのかどうか


 さらに、都心マンション需要層の表面に躍り出てきた団塊の世代の需要。今後2007年から始まる本格的なリタイアメントを控えて、北海道全体から札幌都心居住を目指す流れが強まっているというなかで、はたして魅力ある都心住まいが今後も確保できるのかどうか。マンション建設が下火になれば、札幌市の都心活性化という流れ自体が勢いを失いかねない。


2005年8月  (不動産市況アナリスト 志田真郷)


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