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2004年10月巻頭言

マーケット構造の変化を読み解くために


脱標準家族化の進展、公庫シェアの急激な低下など、マーケットの構造変化が進んでいる・・・・


 先月、社団法人日本マーケティング協会北海道支部主催の定点セミナーで「脱標準家族の住マーケティング」と題して2時間の講演を行った。家族人員数の変化とそれに対応した住宅のプランニングの新しい課題や傾向を機軸に、2007年問題や団塊ジュニアの価値観などを絡めて2時間休憩なしで講演した。  時間一杯お話したので質問時間がほとんど取れなかったが、翌日以降様々な反響があった。出席者は、デベロッパーや広告代理店、不動産業者、食品業など多岐にわたっているが、間取りについての解説が面白かったというものや、今年前半のマーケット分析の内容確認を求めるものなど様々である。このことは、マーケットの傾向が読みにくくなったということ、さらに、マーケティング戦略のポイントがかなり高度になってきていることを反映しているものと思われる。


 ひとつは前回も指摘したが、住宅金融公庫のマーケットシェアが急激に低下した結果、様々なマーケット構造の変化が起きていること、それに加えて、家族数の変化など、住宅需要の構造的な変化がかなり急テンポで発生していることなどが背景にあるものと考えられる。


変化の様相を如何に捉えきるか・・・・・

 セミナー当日の日経新聞には物価上昇の記事が掲載されていた。中国の北京オリンピック景気に牽引されて、鉄鋼やコンクリート、ガソリンなどの基本素材の価格が上昇し始め、それが航空運賃にまで波及し始めている。気がつけば物価上昇がひたひたと迫ってきているのである。長期金利も上昇の過程にあり、バブル崩壊後続いていた「デフレ」「低金利」という二つの常識が大きく揺らぎ始めている。そういう、時代の大きな変化と、市町村合併、団塊世代のリタイア、消費税値上げなどの様々な構造的中期的な変化要因と住宅需要の基本である「家族」の変化とを総合的に戦略化する視点が求められているのである。


進んでいる札幌マーケット。データに表れない間取り変更をどう把握するか  


 家族を容れる器としての住宅は、家族という形に応じて変化することが求められている。しかし、家族の形はまた、住宅という器に合わせて変容していくものでもある。この二つの間のダイナミックな関係をどのように構築していくかという課題が、家族側にも、住宅産業側にもそれぞれ求められているのが現在の住宅マーケットの基本課題であるといえるだろう。


 住宅公団が戦後の住宅不足の時代の要求に合わせて、大量供給システムにより「住宅産業」の形を整えるという課題を背景に進めてきた「NLDK」という住宅様式が何かと問題視されるようになって久しい。すでに4人家族という「標準家族像」が多数派ではなくなっているのだが、それに応じたあらたな住様式がなかなか見つからないという課題である。このため、様々なプランニングがマーケットで試されている。


 この点で言えば、東京のマンションマーケットにおけるプランニングの傾向よりも札幌のマンションマーケットにおけるプランニングの変化のほうがかなりダイナミックに変化しているというのが筆者の感想である。東京のマーケットは、広いプランのマンションはかなり高額物件となるため、高額所得者のための超高級商品として様々な新提案のプランニングが現れていることは確かである。しかし、一般的なユーザーが求めるマンションの広さという意味では、札幌マーケットのほうがはるかに「高級化」している。この広さの中に「二人」を軸とする「ニュースタンダードファミリー」(新標準家族はふたりというのが筆者の見解)が住まうというのが札幌のマーケットの特徴である。このため、モデルルームはあくまでプロトタイプに過ぎず、多くはプラン変更されて購入されている。すでに実態として「脱標準」が進んでいるのである。マーケットデータにおいて、購入されたタイプがどのタイプであるのかを明確に把握することが不可能になっているのである。このためある意味で、プロトタイプに過ぎないモデルルームの間取りをいくら研究してもマーケット実態が見えてこないというジレンマが生じる。新たなヒントはどこにあるのだろうか。
2004年10月
       不動産市況アナリスト 志田真郷


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