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2006年3月巻頭言

ついに耐震強度不安物件が札幌でも・・・


マーケットへの影響を最小にとどめ、最善の解決をするために


早期の実態解明を・・・・


 ついに新聞、テレビ報道で札幌市内での構造強度不安によるマンションの「販売延期」(中止)物件の存在が伝えられた。執筆時点(3月6日)では、分譲マンション2物件、賃貸物件2物件についての報道で、入居済み物件は賃貸1棟のみ


 分譲マンションについては、入居前のキャンセルで、売り主側からの違約金支払いによる販売中止という状況になっているようだ。デベロッパー側が引き渡し前に手を打ったことにより、引渡し入居後の問題発覚という最悪の形にならなかったのは不幸中の幸いというべきか。


 しかし、現時点での報道によれば「建築基準法上の要件は満たしているが、安全性を確保する上では、余力を持った耐久性が必要と判断し、解約にいたった」というような説明になっていて、現実的にはどこに問題があったのか、明快になっていない。


今後の展開によっては、マーケットに多大な影響が発生する可能性がある。


 特に、問題が限定的なものなのか、他にも起こりうることなのかということについて、明確になる必要がある。仮に解明に時間がかかるということになれば、マーケットに与える影響は計り知れないものになる。当該デベロッパーを含め、行政機関などの公的機関による正確な事実の開示が最も優先されるべきことだろう。仮にこれらの内容開示が遅れるとすれば、マーケットの現場で個別に確認しなければならないということになり、各販売現場では、相当混乱することになろう。とりわけ、販売代理システムをとっているところでは、責任ある売主の説明が求められることになるため、対応策の策定の厳密さが求められるだろう。


 金利アップ・都市計画変更に加えての超逆風が吹く・・・・


  札幌市内のマンションマーケットでは、1月2月の大雪や寒波の影響もあって、昨年比3割減の成約状況であると言われている。これに今回の事態が複合すると、かきいれどきといわれている3月のマーケットが停滞し、深刻な事態にもなりかねない。


 それに加えて、これまでも指摘してきたように、札幌市の都市計画の変更により、市内全域に「高さ制限」が実施され、新規マンション供給の傾向が大きく様変わりする可能性がある。従来45メートル、15階のマンション建設が可能であったエリアが、33m(11階)、または27m(9階)までとされるところが極めて多く、これらのエリアにおける新規マンション建設の事業採算性は大きな変化を求められることになる。このため、新規立地エリアが大きく変動していくものと考えられる。


 札幌市だけに限定された開発環境の変化については、札幌のマーケティングとして深化され、練りこまれていかなければならない。さらに全国一律におきる課題として、「金利の上昇」という逆風もある。これによってマンション購入の所得ゾーンが上昇し、ファミリー物件中心にマーケットの狭小化が起きることは必至だ。


 このような複雑な要件が入り組んだマーケット環境では、とりあえず、耐震強度不安問題について、早期の解決が何にもまして、求められている。業界・行政の誠実な対応を切に望んでいる。


3月マンションマーケットで、400戸超の成約・・・


 耐震偽装で不安視されたマーケットにとりあえず安堵感


 中には、発売以来発売即成約を続ける大和ハウスのDグラフォート札幌ステーションタワーの65戸が含まれているが、総じていい成約動向にある。一旦マンションの購入検討に入った客たちの「熱」は簡単に冷めることなく、具体的に疑惑や疑問点、不安点が解消されれば、成約を止めるということにはならなかったということだろう。中には、「北海道人気質だ、深く考えたりせず、簡単に決める」と指摘する人もいるが、耐震偽装問題自体が詳細に報道されず、問題が深く掘り下げられていないことも影響しているように思われる。


 逆に言えば、この問題は「掘り下げていくと底なしになる」と指摘する人もいて、北海道のみならず、全国的な視野で見ても、問題の根は深いといえる。具体的に、損害賠償の責任区分が明らかにされていないことから、各当事者がかなりナーバスになっていることは明らかで、とりわけ、行政の「見逃し責任」による負担割合がどの程度に評価されるかということは、具体の裁判によらなければ明らかにならないたろう。しかし、この問題がそのような裁判による決着を要する問題として処理されていくものであるとすれば、今後もかなり尾を引く問題になっていく可能性がある。とりあえずで恐縮だが、「二度と偽装しない、見逃さない」という業界と行政の「決意表明」くらいは、早期に表明して欲しいものだ。同時に具体的な防止措置の制度化とともに。
マーケットへの信頼を回復するために・・・・


 今年に入って、不動産公正取引規約の変更(1月)があり、さらに、札幌市の都市計画の変更が3月末からスタートしている。また、金利の先高懸念については、先月指摘したとおりだ。


 また、5月からは「新・会社法」がスタートする。有限会社の制度を止めて、株式会社を中心に会社の類型を整備することと、最低資本金制度をなくし、1円資本金の会社も合法とするなど、「会社」を設立しやすくする、画期的な法律である。このことが不動産取引と少なからず関係するという考えもありり、従来の個人取得の不動産という考えから、法人所有による不動産経営という発想がより具体化していくことになっていくものと考えられている。


 このように、今年は様々なことが「踊り場」に差し掛かっていることをしめす制度変更がある。経済状況がデフレからインフレへと大きく転換する兆しを示しており、まさに「人口減少元年」のふさわしい様相を示してきている。


 来年からは団塊世代のリタイアが始まり、日本の労働構造や、財政構造、消費構造などが大きく変化していく。


 これらのことは、流行語となった「想定内」の事態であることは間違いないが、まさか、あの「姉歯事件」が札幌でも現実のものになろうとは、正直「想定外」だったと言わざるをえない。


 マクロの流れや、法律の変化による影響分析は「予想」が可能であるが、これとて、外的条件にマーケットを構成している人々が正常に反応することを前提として予想しているのに過ぎない。許認可や法的手続き自体に問題があると言うような、制度自体を無化してしまうような「想定できない事態」が表面化するようなことがあると、とりあえず、立ち止まって、原則的な確認をおこなうしかない。


 そういう意味では、業界および行政は、判断停止に陥らないよう、「気をしっかり持って、解決に全力をつくせ」ということと、さらに思想や哲学など、原則的な部分での議論や論争が足りないのではないかということを提起しておきたい。
2006年3月


不動産市況アナリスト 志田真郷


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